TAD1983AR_CRS


 実は2005年2月半ばに私(HASENOBU)の元に、とある方(TADさん)から「ちょっと変わったARの件」というタイトルでメールが届きました。折悪く、ちょうど出張に出かける直前のことでしたのですぐにリプライはできなかったのですが、先日、出張から戻ってリプライをして、その詳細が分かりました。(というか、ほんと、「良く分からない」ということが良く分かりました。(爆))

 ということで、TADさんの謎のギターをここに公開、紹介し、是非是非、皆様からの情報を待ちたいと思います〜〜! このギターについて何か御存知の方、どうか、タレコミを!!(爆)

 ま、そういう訳で、まずはTADさんから頂いたメールを(若干、修正しながら)ここに再掲します:
---以下、転載--- 
> こんばんは。
>
> 初めてメールいたします。
> ARのことを調べようと思い、検索していたら貴殿のHPを見つけ、楽しく拝見さ
> せていただきました。
>
> 私は、N県M市在住のTADと申します。
> グレコ、イバニーズが大好きで、高校生に初めて買ったギターはまだ所有しています。
> 昨年のことになりますが、リサイクルショップでたまたまジャンク品ARを見つ
> け、衝動買いしました。
> (どこに落下させたのか、ネック側面:指盤、フレットは浮き上がり、ペグは
> 一個折れ、悲惨な状態でした)
> しかし、見たとたんビビッと運命の出会い(笑)を感じ、即買いでした。
> 今まで時間と気力が無く、修理ができませんでしたが、先週重い腰をあげて修
> 理してみました。まずは音をまともに出せるようにするのが先決と思い、フレット
> 周りを大手術、間に合わせのペグを取り付けて、弾いてみたところ、 ほれぼれする
> ようないい鳴りでびっくり!それで、このギターのことを調べてみようと思い立ち、
> いろいろ調べてみましたが、どうも同じモデルがみあたりません。(カタログ
> もありますが79年だけだし・・)
> 21フレットに「Limited Edition」と四角でなく曲線の葉っぱ型インレイも入っ
> ているし、ネックのバインディングやインレイもパターンが違います。
> シリアルNoは「C832138」で、色はチェリーサンバースト、ボディ表は
> メープルのバーズアイ?(といってもAAAクラスではないようですが・・)
> 特注品かなにかでしょうか?
>
> もし見ていただけるようでしたら写真をメールさせていただきたいと思います
> がよろしいでしょうか?
> お忙しいところ恐縮ですが、お返事いただければ幸いです。
---以上、転載---

とまぁ、こういうような内容で、それで私としては(?)、「シリアルナンバーが入っていることからすると、いわゆるプロトタイプではなさそうですね...。で、Limited Edition とあるからには、まちがいなく限定生産ですね...。特注とまでは言えないかもしれませんが...。」という要領の得ない返事しかできず(涙)、是非とも画像を送って下さるようお願いしたのだった。

 で、私からの応答が鈍かったにも関わらずTADさんはすぐに返信して下さり、画像とともに以下のような観察(?)を記してくれた:
---以下、転載---
> AR300の系列のようですが細かいところがどのモデルにも該当しません。
> シリアルNoはC832138、私の見たところ大きな違いは、AR4000と同じヘッドインレイ、
> 同じくLimited Editionインレイ、ポジションマークはどの資料にも載っていないパターン
> で、通常12フレットにある5ピースのように、すべてのマークが5ピースで、しかも
> アバロン/白蝶貝/アバロン/白蝶貝/アバロンとパターンも逆でゴージャスな感じです。
> ネックも良く見るとセンターがメイプル、サイドがマホガニーと、通常の逆です。ボディ
> トップは、中途半端なフレームともキルテッドともバーズアイともつかない?メイプル
> です。三角プレートは欠損。
---以上、転載---

ふむふむ...。
 ちなみに、TADさんはJapan Vintage (以下、JV と表記)を買い揃えているとのことで、「ネックも良く見るとセンターがメイプル、サイドがマホガニーと、通常の逆」という記述(?)も、きっと Vol. 3 の「AR特集」(同書42ページの文面)を根拠としたものだと推察されるんだけれど、実は(?)、マホガニー+メイプル+マホガニーというパターンはAR1500において採用されているのと同じ、というのが真相(笑)ということで...。

 ま、私のくだらない説明はこれくらいにして(笑)、送って頂いた画像を紹介しましょ〜! どうぞじっくりとご覧下さい〜。




ふむ...。遠目に見ると、コントロールスイッチの配列など、一瞬、AR300CSかな、と思ってしまいそうですね、確かに。




う〜ん、だけど、このヘッドのインレイ、形は確かにノーマルな300とは同じですが、使用している材(貝の種類)が異なってますよね...。1500などのように微細なものではないけれども...。




バックビューを見るかぎり、バックの材はマホガニーということで、これは通常の300と同じでしょう、きっと。




ふむ...。確かにこのポジションマークのインレイは普通のじゃないですね〜...。




もう一つ上の画像でも分かりますが、ネックにバインディングが入ってますよね、これも通常の300にはない仕様ですね。<1982年までのAR500などに入れられていたのと同じパターンのストライプ入りのバインディング。
 また、21フレットの「Limited Edition」のインレイは確かに JV Vol. 3 で紹介されている1985年製AR4000と同じタイプのもの。




ちょっと解像度を落としたため、少し分かりにくくなってますが(ゴメン〜!!)ボディトップは確かにバーズアイが入ってます、はい。




3点支持のクリーム色のエスカッション、同じくクリーム色の、先が平らなトグルスイッチ、並びに白のゴムのワッシャー留め(?)などは通常の300と同じ。<書くまでもないか...。




シリアルナンバーは見ての通り、ちゃんと普通通りに入ってます、はい。但し、ツマミがパーロイド(アクリル)のベルベチューンIIは、この時期では(カタログによれば)AR1505のみに採用されていたモノ。>通常は金属のはず。(ちなみに3弦のチューナーは、上の方に書いてあった通り、別のモノをつけているということで。)



ネックについては上述の通り。普通の300であれば3ピースメイプル。

 ということで、通常と異なる点がいくつも見受けられるこのギター...。どなたか、何か情報はお持ちではないでしょうか...? 300ベースの特別仕様、って感じですが...。
 この年の終わり頃に「バーズアイメイプル」トップの330ってのが限定で出されますが、その前段階(?)として、極く少数、それまでのフレイムメイプルではなくって「バーズアイで出してみようか?」というような雰囲気(意味不明)で、その春に実験的に生産されたモノでしょうか...。<適当に書いてます、はい。(爆)

 とにかく、私には謎だらけのモデルです〜...。どなたか、タレコミして下さい〜!!
(ここまで2005年03月10日 記載)

 ううっ...。す、すみません、何を勘違いしたのか、上の数行、内容的に間違いです!(爆) 「この年(1983年)の終わり頃に〜」などと書いていますが、そうじゃなくって、バーズアイメイプルトップの限定モデルAR330は、その前の年、つまり1982年の終わり頃に製造・出荷されたのでした...。
 ですので、その経緯を考えると、材として残った(?)バーズアイメイプルを使って作ったという順番である訳でして...。すみませんでした...。

 で、既に3週間近く経過したのですが、う〜ん、情報は集まらないですね〜...。ただ、とある経路(?)からの情報では、「かつてのフジゲン工場では、試作ラインのものにもシリアルナンバーが付けられたりもした。つまり、「プロトタイプ→シリアルなし」ではなかった。」とのことでして...。
 ま、「シリアルなし→プロト」という図式は生きていますけれども(笑)、確かに(私が勝手にAR Customと名付けた(笑))1979年製の、KAZUさんのギターなど、「楽器ショー用に作られた」とのことですし、でもシリアルがついているというのも、今となってはちょっと頷けることとなりますよね〜...。
(ここまで2005年03月30日 追記)

 ってことで(?)、公開調査をしましたが、う〜む、ちょいと情報が集まらない状態でして、結局(?)、所有者であるTADさんが独自のルートで調べられた結果がメールにて届きました。ちょいと手を加えつつ下に紹介しておきます〜!

---以下、引用---
公開調査お願いしておりました「謎のAR」につきまして、私の(いや、正確には私の友人の)調査の結果をご報告できる運びとなりました。ひとえに友人のおかげでありまして、私はな〜んにもしていないようなものですけど(笑)。
1.型番はAR3***CSではないかとのこと。(現在把握されている古いAR3000とはコントロールが違うのが謎ではあるが・・)
2.プロトタイプではなく、1983年3月に極めて少数(数本)製造されたのうちの1本であるらしい。
3.何らかの企画のもとにスポット生産された可能性が高く、一般に販売されたものである。(これは、みなさんもご存知かと思いますが、カタログモデルとは別に、企画物、シグネチャー、ショップオーダーなどで数本単位で作られたモデルがあるということ。)
 ただし、友人所有の1983年の雑誌の有力ギターショップの広告をみてもショップオーダーとして売られたものでは確認できませんでした。また、当時のアーティスト(ゲイリー〜、〜ルカサー)が使った写真等は確認されていません。残念ながら、どういうルートで流れたものかまでは確認できませんでした。
4.総合すると、「後のAR4000へ繋がる位置(あるいは同等の扱い)にあったのでは?」と推測される。
 筆記体でLimited Editionのインレイの入っているものは、3.の欄に当てはまるものに入っていると考えられる。
 ただし、これはあくまで推測ですが、『Japan Vintage Vol.3』にも載っているように、アーティストに渡す、またはショップににてアタリを見るための物だったのかもしれないとも思われます。
---以上、引用---

 ふむ...。

 ということで、回路的なことから言うと確かに、旧型のAR3000とは異なっていて、その意味では「型番はAR3***CS」というのは何とも言えないのですが、私(HASENOBU)の勝手で強引な理由付けにより、TADさんのこのギター、AR3300CSと名付けたいと思います。(爆)>ま、理由としては300系と同じ回路であること、そして330と同様、バーズアイメイプルが使用されていること、しかし色んな仕様からして(?)三桁のモデルとは考えられないということで。(笑) よろしいでしょうか、TADさん?(爆)

 と言いつつも、同時に数本制作されたのは間違いないとのことですので、引き続き、モデル名も含め(笑)情報の提供、お待ちしてます〜!!
(ここまで2005年04月18日 追記)

 ということで、なかなか、これ以上の情報が集まらないわけですが、TADさん御本人から申告(?)がありましたので、情報を追加しておきます。以下、メールの文面を(ちょっとだけいじって)再掲しておきます:
---以下、転載---
 HASENOBUさん、こんばんは。
 2日ほど九州に出張をしておりました。(とある街の工場に立会いでした) M市から特急&新幹線でしたが、乗り換えは少なかったのですがさすがに5時間以上は遠いですね〜。駅前のステーションホテルに1泊しましたがとても快適でした!
 さて、その移動中にギター雑誌を見て時間つぶしをしていたところ、私のARとそっくりなメープル材のオールドGIBSONレスポールの写真に目がとまり読んでみたところ、そのメープルは「ブリスター」と呼ばれるものであることがわかりました。感じとしては、湖(沼?)の底からポコポコと湧いてくる気泡というか、温泉というかそんな感じのメープルです。表現がわからなくてバーズアイと書いてしまいましたが、ハッキリとした目もなくどうしてもひっかかっていたので、もしよろしければ追加で訂正しておいていただければ幸いです。(間違ったままでは恥ずかしくて・・) もちろんお任せいたしますが・・。
 では宜しくお願い致します。
---以上、転載---
(ここまで2005年08月05日 追記)

 このギターの所有者であるTADさんからさらに追加情報が届きました!

 ってことで、ご本人の許可を得てますので、文面の転載です:
---以下、引用---
AR3005についてのご連絡です。

当初、6本のみとしておりましたが、正確には3月に6本、そして4月に4本製造。計10本が製造されていました。
謹んで訂正させていただきます。
現存していれば、シリアルの頭がCのものとDのものがあったはずです。

正式名称はAR3005AV。

カタログモデルとしてはラインナップされなかったこと、
なぜ私のものがCSカラーであるのかは不明で謎のままです。

これは私の推測ですが・・1982年あたりから特殊材の末尾番号“5”のモデルが出始めたのでAR5000までのラインナップを埋める流れでAR3000の特殊材バージョンを作ったのかな?
---以上、引用---
(ここまで2013年10月17日 追記) inserted by FC2 system