「とんぼの部屋」のこと


 前に、私は「彼らの最初から最後までをみつめ続けてきた訳ではない」ということを書いたことがある。また決して彼らの熱狂的なファンでもない、というのも、事実だ。なのに、どうして、こういうコーナーを設けたのか...?
 と、いきなり疑問を投げ掛けても困ることだろうが...。(笑)

 それに彼らの全てが素晴らしい、とは思っていない。好きになれない曲というのもある。「世の中うまくいかないもんだの唄」など、私の好みではないし、また、ライブアルバムで饒舌なのも好きになれない。(ステージ上であればどうでもいいけれど、音楽で勝負するのであれば、漫談のようなトークは削って、一曲でもいいから曲を数多く収録して欲しい、と思うからだけれど...。) 

 そんな私なのに、どうして...?(笑)

 実は、私自身、分からない。(爆) だけれども、(今ではかなりの音源を入手できたけれど)時折、彼らのテープを取り出しては「あぁ...、いいなぁ...。」と20年ほど前から思い続けてきた私なりの、う〜ん、何と言うのか、彼らの音楽に対する恩返し(?)みたいなものだ、と思う。
 例えば彼らの「まわり道」という曲の前奏。コンプレッサーの効いたエレキギターの音色。流れるようなベースライン。和音でリズムを刻むピアノ。長さにして20秒。小節で言っても10小節足らずの短い演奏だけれども、聴く度に心が洗われ、そしてじ〜んと来てしまうのだ...。(自分でも、その理由は良くわからないが。) 「あぁ〜...、いいなぁ、とんぼは...。」としみじみと感じてしまう...。

 というようなことを考えていたときに、とある方から頂いた私信に次のように書かれていたのを読んで、私は思った。このような「とんぼの部屋」を作ろうと思い立った私の心境の裏側(か、どこか)に、同じような思いがあったのではないのか?

 以下、御本人の許可を得たので、その私信の一部を転載:

> 私がとんぼに固執するのは、あまりにも彼らの残した痕跡が
> 現在失われているからです。私が上で触れたアーティストは
> 何らかの形で(フォーク大全の番組で紹介されたり、
> メンバーが活動を続けていたり,カラオケにあったり)
> 痕跡が残っているのですが、とんぼについては私の周りに
> なにも痕跡が認められないためです。私の周囲の人にも
> 知っている人は少ないです。

 ウェブの世界のことは良く分からないし、私のホームページが今後どうなって行くのかも分からない。が、こうやって(たとえ読む人が少なくとも)「とんぼ(ちゃん)」の音楽のことを多少なりとも記録したモノがあること、(私を含めて)彼らの音楽に魅かれた人達がいたことを伝えたいという思い、それが私を動かしているのかもしれない...。手間がかかるだとか、損得だとかの話は抜きにして。

 誰のためでもない、ただの自己満足なのかもしれないけれど、今のところ、私はこのコーナーを閉じるつもりはない。
(1999年11月11日 書き下ろし)

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